音楽家のフォーカルジストニアリトレーニング
痛みが伴わない疾患
音楽家の負傷の代表格としてあげられるのは腱鞘炎などの痛みを伴う疾患かもしれません。
フォーカルジストニアも音楽家の負傷ですが、ほとんどの場合痛みは伴わず思い通りに手指などがコントロールできなくなってしまう脳神経の病気です。医学的には不随意で持続的な筋肉収縮を引き起こす神経疾患である(Wikipedeaより )とされています。
フォーカルジストニア・局所性ジストニア( FOCAL DYSTONIA ) とは
フォーカル<FOCAL>局所的な
ジス <DYS> 困難、病的アブノーマルな
トーン<TONE> 筋肉の緊張
ニア<NIA> 〜な状態
局所的にアブノーマルな筋肉の緊張がある状態 という語源の通り、症状として当事者が一番気になるのは筋肉の極度な硬直であり、不本意に筋肉が著しく収縮していまうので手のバランスが崩れてしまい楽器を弾くのがとても困難となってしまいます。
今まで楽器を弾くことに伴う動作と感覚の記憶にフォーカルジストニアという邪魔者が付随していまっているような感じで、楽器を今までどう弾いていたか分からなくなってしまう記憶喪失のようなことが起こってしまうのです。
症状である筋肉の硬直や感覚の違和感などをなくそうとして症状の緩和に焦点をあててリラックスしてみたり、奏法を工夫してみたりしても、完全な改善に繋がるのは非常に難しいかもしれません。しかし、近年動作と感覚のリトレーニングやバランスを整えていくリハビリ ( rehabilitation )<RE> 再度 <HABILITATE >スキルを取り戻す などによって楽器を再度自由自在に弾けるようになる方が増えてきています。
リハビリを進めていく上でのアプローチはとても重要で、焦点がずれてしまっていてはリハビリをしているつもりでもなかなか症状は改善せずに止まってしまいます。
本教室では楽器演奏における身体の動きを見直し、アンバランスを根本的に整えていくリハビリ法を進めています。リハビリのアプローチは今までの履歴、経験、回復の度合い、目指したいころ、などを考慮しながら様々な視点から考えます。
過度な強張と硬直の裏に隠されたもっと大きな問題
巻き込み、強張り、硬直、違和感などの症状を主な問題点ととらえがちですが、過度な筋肉の緊張は過度な筋肉の弛緩(緩み)のバランスの現れでしかないという見解があります。緊張と硬直と違和感だけに目を向けずに実際に不活発な筋肉、動きの幅が著しく少ない筋肉などを見分け、手全体や身体の筋肉を活性化させることから根本的な問題点に着手していくことができると、過度な緊張や違和感が少しずつ緩和していきます。
動きが周辺部分に比べて少ない箇所、筋肉の使い方が著しく乏しい箇所などは実は症状が発症する以前から存在していたころも多く、拮抗のバランスのおさらいをするとともに楽器奏法にのみならず手本来の運動技能について考え、動きの幅を観察します。長く動かし慣れていないところは難しく感じることがありますが、弛緩した筋肉を少しずつ活性化することによって手のバランスが戻ってくることを実感します。
環境の変化に対応しきれない身体 体内外の環境を読み取る力をつける
フォーカルジストニアの症状はずっと現れているのではなく、細かい環境の変化に対応しきれいない事で現れると解釈できます。起こってしまったアンバランスによって、今までの感覚で身体の内外の環境を読み取れず、体の細かい動きの変化、感じる刺激の変化、思考の変化などに対応できずに運動と感覚のループがうまく作動できないのです。
同じ指を使っていても、指と楽器との接点(場所)、圧力の強弱、角度や身体との位置関係などによって指先が感じ取る経験は一つずつ全く違います。身体が十分に動ける自然体の姿を見直し、その中で一つずつの細かい経験をに対して身体がどのように対応しているのか観察しながら、動きや接点、圧力などを感じ直し、感覚と動作の細かく合わせていく作業をします。
無意識に刺激を阻止しているホットスポット
身体と楽器との接点は細かく見ていくとどうしても身体が受け入れたくない、或いは環境を読み取ることができないために不安に感じる部分があります。この感じを「違和感」などと表現しますが、違和感の裏腹にはその部分が環境を受け入れられずに(感覚を読み取るアンテナを閉ざしてしまう)それによって身体の形も動きもイメージできない問題があります。イメージできないことは動きには繋がらないので、しっかりとイメージを固められるように機敏に感じ直すことを念入りにします。感じ直し、イメージを固めることができてくると動きが自然に戻ってくるだけではなく違和感も減少してきていそのうち消滅します。
手指がとても硬く感じたり硬く見えたり従来の奏法からかけ離れたポジションをとってしまったりする事の原因は無意識に触りたくない箇所を阻止している身体があるからとも言えます。ジストニアの症状を器用に迂回しながら弾く事を目標とせずに、根本的に症状が表面化してしまうシナリオを一つずつ直視し、それに対しての緩和の仕方を考えていきます。
当教室のフォーカルジストニアのリトレーニングについて
リハビリには時間を要しますが、着実に焦らず一つずつこなしていく事で完全復帰まで回復することは大いに可能だと認識しています。
こんな方が現在通われています ↓
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最近フォーカルジストニアと診断された方
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色々な治療法を試したけれど効果が見られなかった方
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自己流でリハビリしてきたつもりだけど改善が見られなかった方
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仕事を休むことができず演奏をしていくプレッシャーがある方
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改善が見られたけれど行き詰まっている方
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この先の方向性について迷われている方
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新しいアイディアが欲しい方
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気持ちを新たに向き合いたい方 等
リハビリレッスンの形態はその都度ご都合に合わせてレッスンをご予約いただく単発レッスン制度と
月3〜4回レッスンをスケジュールしながら二人三脚でワークしていく月々顧問制度とあります。
基本的にピアノの方のレッスンを中心にしていますが、ギター、ヴァイオリン、チェロ、フルート、クラリネットなどの他の楽器の方も通われています。
すべてのレッスンはインターネット(ZOOM や SKYPE) 越しですることも可能です。
普段はインターネット上でレッスンを受講されている方でも可能ならばなるべく頻繁にリアルレッスンを合わせて受講することをおすすめします。
個人レッスンの他にワークショップも開催しています。
初回レッスンについて
まずは初回レッスンにお越しください。
初回レッスンでは特に弾きにくいパッセージややりにくい動作などをご用意ください。
お話をお伺いし、そしてこれから具体的に何をしていけば良くなっていくのかなどのプログラムなどをご提案させていただきます。初回レッスンは90分ほど、費用は10000円です。
受講生の一言
『先生のご指導、本当に凄いです!…深く感謝しております。まだまだ先は長いと思いますので、出来なかった事が少し出来るようになる楽しみを感じつつ、焦らず取り組んでいきたいと思います。』
『レッスンにあったテーブルに手をついて根元から薬指、小指を持ち上げる動きについては親指の母指球筋がとても大きな役割を果たしていることに気が付くことができました。こんなに早く回復が進むとは思っていませんでした・・・』
『初めて伺った時は、先が見えない不安ばかりでしたが、先生に教えて頂いた事で、こんなに早く変化が起こるとは、本当に驚きと感謝の気持ちでおります。』
『レッスンのたびになるほど、と納得してしまいます。気が凄く楽になってきました。』
『(通い始めて)今まで疑問に思っていた事に対して、一気に答えをいただいた感じがしました。』
『とても不安でしたが、具体的な考え方や練習の方法を丁寧に教えていただき理解できました。』
『鍵盤とのコンタクトの重要性を教わり、それが早道だというお言葉を信じて数ヶ月・・・実際に効果を感じています。積年のご経験を伝授してくださり、心から感謝しております。』
『とても辛いと思っていた事がレッスンに通い、今となってはこんなに面白い事があるのかと思えるようになりました。』
『(以前は)もう2度と弾けるようにならないかもしれないと本心思っていました。先日曲を弾き通せて自分でも感動しました。まだまだ完全克服までは課題が山ほど残っていますが、引き続き頑張ってまいります。』
『今まで波がかなりあったのですが、先日の本番ではほとんど違和感なく弾けました。治らないと思っている方たちに大声でそんなことないよ!と教えてあげたいです。』
『飲み込みが遅くてすみません。レッスンで習ったことを消化して理解するのに1ヶ月ほど時間がかかってしまうんです。でもおっしゃった事が「こういう事か」と理解し消化できた頃には、体も変化していくから諦めずに通う事ができます。』