今年はフランスの作曲家モーリス・ラヴェル(1875年3月7日生誕)の生誕150周年を迎える特別な年。
個人的には大学時代の恩師であるフランス人ピアニスト、ドゥフィル先生とモーリス・ラヴェルは、私にとって切り離せない存在です。先生のラヴェル演奏は、繊細さと色彩豊かさ、丸みを帯びた立体感、そして異次元的ともいえる表現力に加え、音のコントロールがまさに完璧でした。その芸術性とフランス特有の国民性が表現された演奏は、当時の私にとって真似することも叶わず、ただ圧倒されるばかりだったことを今でも鮮明に覚えています。
そのラヴェルの繊細で色彩豊かな表現力と高度な技巧が特徴の代表的なピアノ作品を紹介します。
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1. 亡き王女のためのパヴァーヌ(Pavane pour une infante défunte)
特徴: シンプルで静かな旋律が印象的な作品。優雅で落ち着いた雰囲気の中にも、ラヴェルらしい透明感のある響きが感じられます。
難易度: 初級~中級
ポイント: 手の広がりが求められる箇所がありますが、技術的には比較的取り組みやすい作品です。音の美しさを保ちながらフレーズ感を意識して演奏することが重要です。
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2. ソナチネ(Sonatine)
特徴: 全3楽章からなる小規模なソナタ形式の作品。精緻な構造と透明感のある音楽が特徴的で、ラヴェルのピアノ作品の中でも親しみやすい一曲。
難易度: 中級
ポイント: 繊細な表現や流れるような速いパッセージにはややテクニックが必要。
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3. 水の戯れ(Jeux d'eau)
特徴: 流れる水のきらめきを音楽で描写した作品で、印象派の代表作の一つ。響きの美しさと技巧的な側面が見事に融合しています。
難易度: 中級~上級
ポイント: 両手の均等な独立性や速いアルペジオの処理が求められます。音の透明感を保ちながら動きを滑らかにするのが難しさの鍵です。
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4. 鏡(Miroirs)
特徴: 全5曲からなる組曲で、それぞれ異なる情景や感情を描写。特に「蛾(Noctuelles)」や「道化師の朝の歌(Alborada del gracioso)」が有名です。
難易度: 上級
ポイント: 各曲ごとに異なるテクニックや表現力が求められるため、一曲ずつ取り組むのもおすすめです。「道化師の朝の歌」はスペイン風のリズム感が鍵です。
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5. 夜のガスパール(Gaspard de la nuit)
特徴: ラヴェルのピアノ作品の中でも最難関とされる3曲からなる組曲。「オンディーヌ」「絞首台」「スカルボ」の3曲で構成され、詩的で幻想的な内容を高度な技巧で描写しています。
難易度: 上級
ポイント:「オンディーヌ」では繊細なアルペジオと柔らかい表現力が必要。
「絞首台」では不気味な雰囲気を絶妙なバランスで保つことが求められます。
「スカルボ」は非常に速いパッセージや跳躍があり、テクニックと集中力が試されます。
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「今年はラヴェルを記念すべき年!」と声がけてラヴェル初心者からラヴェルファンまで、早速1月現在当教室生も上記作品に取り掛かっています。
ラヴェルを弾き慣れていない皆様も今年を機に弾いてみてはいかがでしょうか。

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