ピアノを習い始める生徒さんに「電子ピアノ(デジタルピアノ)でもいいですか?」
と聞かれることがあります。
結論から言って・・・良くありません。
電子ピアノもアップライトピアノも鍵盤楽器ではありますが、
電子ピアノはピアノではありません。
電子ピアノという楽器の名前に「ピアノ」がついてしまっているために
ピアノだと思い込みがちですが、違います。
電子ピアノはピアノという楽器を真似た鍵盤楽器ですが、
ピアノではなく偽物のピアノです。
偽物が良くないわけでは決してありません。
世の中には偽物の方が便利で好まれる事があります。
例えば、これから暑い季節に入って良く食べるかき氷につけるシロップ。
カキ氷についているいちご味のシロップなめて、
いちご味だな〜とわかりますが、
本物の苺を真似た偽物の味なのは
子供でも良く分かります。
いちご味のシロップは氷の上にかけるのに、
イチゴより甘くて安くて便利で日持ちします。
その上まあまあ美味しい。
かき氷の上にかけるものとしては
偽物のであるいちご味のシロップの方が良いかもしれません。 いちごシロップはとても単純な味がしますが、
本物のいちごはそうではありません。
春先にいちごを食べた時を思い出してみましょう。 程よく硬すぎず柔らかすぎないいちごの食感、
噛んだ瞬間に広がる苺の甘酸っぱい果汁、
噛んでいるうちに口の中でプチプチとはじける苺のタネの音、
思わずワクワクと嬉しい気持ちになってしまういちごの香り。 どうでしょうか。本物の苺は味だけではなく、
食感や香りなどもはるかに豊かですね。
言ってみれば本物の苺は本物のピアノ、
苺シロップは電子ピアノに例えても良いかなと思います。
電子ピアノで練習することは、
本当は苺のショートケーキを食べたいのに、
本物の苺は使わずに生クリームに苺シロップを加えたケーキを
妥協して食べているようなものです。
苺シロップしか味わったことのない人に、
本物の苺の食べ比べを頼んでも味覚が発達していないので、
苺の違いも良くわからないと思います。
苺の食感や香りの奥深さを語っても、
苺シロップの単純な味しか知らないために、
語っていることがわからないのです。 ピアノはハンマーが弦を打って弦が振動し、
楽器全体に共鳴して音がなりますが、
電子ピアノの場合は鍵盤を「押す」と
電子版が反応して音がスピーカーからでる仕組みになっています。 鍵盤をどう「押し」てもでてくる音に強弱は少しあるかもしれませんが、
単色で全く同じです。
そう・・・・ 電子ピアノで練習しているお子様は
鍵盤を弾くのではなく、
「押す」仕草をしてしまうことが多いです。
おそらくボタンのように押せば音がでてくるメカニズムに
慣れてしまっているのです。
電子ピアノで練習している子は音が豊かに育ちにくいです。
ピアノは本来音は無限に違う色がでてきますが、
違った色合いを出そうとする探究心も感性も育ちにくいです。
本来ピアノの鍵盤を叩いたり、
押したりすると汚い音しかでてきませんが、
どんな弾き方でも同じような音がでてきてしまう電子ピアノでは
技術がのびません。 電子ピアノは鍵盤楽器なので、
音の配置や音の名前、
音だけを把握するための譜読みなど、
鍵盤については学べます。
「鍵盤」を学ぶのには鍵盤楽器の電子ピアノで十分です。
しかし、身体を使って音で様々な表現をする
「ピアノ」を学ぶにはピアノではないと限界があります。 最初から上手、下手の違いがついてしまい、
それだけではなく電子ピアノは意識的にわかっていなくても単色すぎて、
練習していても楽しくないです。
楽器によって練習の意欲も全然変わります。
確かに電子ピアノは全否定できない側面もあります。
どうしても住宅の事情上電子ピアノしか家に置けないご家庭もあります。
我が教室でも普段は電子ピアノで止むを得ず練習している生徒さんもいらっしゃいます。
普段は電子ピアノで練習している方は
普段の練習以外になるべくピアノで練習できる機会を
増やすようにとお願いしています。
それでも同じ年月楽器を練習してきた子との差や凄くついてしまいます。
長く続くかわからなくて、
最初から電子ピアノより遥かに値段の高いアップライトピアノを
ご購入するのは躊躇してしまうようでしたら、
消音つきアップライトピアノをレンタルすることをおすすめします。
中古でアップライトピアノを安く購入できると思います。
上達のため、継続のために是非ピアノをご用意いただくことをオススメします。
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