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ピアノ教育の理想 マスタークラス・レポ ①

更新日:2023年3月12日

突然ですが… 「ピアノのレッスン」の1シーンを思い浮かべてみてください


と言われたらどんなシーンを思い浮かべますか?




殆どの皆さんはレッスン部屋で先生1人が熱心に生徒1人を教えている、


レッスン部屋には先生と生徒の2人きり


もしくはせいぜい生徒さんのお付き添いの方を含めた3人のシーンを


思い浮かべると思います。



現在では初心者から専門性レベルのピアノ教育として


このようなプライベートレッスンがどの国でもスタンダートとなっていますが、


一昔前の欧米ではプライベートレッスンよりも、


生徒1人がレッスンを受けている様子を他の生徒が聴講して


共に学ぶマスタークラス(公開レッスン)


がもっとポピュラーだった時代がありました。



私も音大時代にゲストとして迎えられた講師が


単発的に公開形式にレッスンを行うマスタークラスに参加した事が度々ありましたが、


それは「スペシャルイベント」であり、


日々の学習のルーチンにそれはありませんでした。



さて、個人レッスンに代わる頻度でマスタークラス形式の


レッスンをピアノ専門教育の現場に再普及する事を理想としていた教育者がいました。


数多くの現代ピアニストの育て親でもある巨匠ピアニストの故レオン・フライシャーです。



先月レオン・フライシャーのお弟子さんでもあり、


晩年アシスタントを務めていたピアニストの Yury Shadrin ユーリ・シャドリン と



マスタークラスを通してフライシャー氏が理想とした


ピアノ教育を当教室の生徒とも直接体験してみる貴重な機会がありました。


Shadrin 氏と Lu 氏 と私とは大学時代、


仏人ピアニスト Monique Duphil 先生の同じ時期の門下だった頃からの仲なのですが、


2人は大学卒業後 レオン・フライシャーの元数年間学び、


指導アシスタントも長年務めました。


Yury Shadrin は第16 回、Tian Lu は第17回のショパンコンクールに参加した時に


日本でもチラッと話題になりましたね。



Shadrin 氏は Leon Fleisher Academy を現在主宰していますが、


元々本アカデミーは Fleisher 氏がお元気の頃に発足したサマーアカデミーでした。


フライシャー氏ご自身が中心核として深く携わったプロジェクトであり、


ピアノ教育の理想を形にする事を試み、


フライシャー先生が亡くなる直前の 92歳の歳でも


鋭敏な考察力で今後のアカデミーの教育理念や経営方針、


後進の育成についてなど事細かく希望を残され、


彼の希望を直に託したアカデミーなのです。


そして嬉しいことに、フライシャー氏が大好きだったという日本でも


アカデミーが関わっていくことをShadrin氏らに希望を残したと言うことで、


今回日本でアカデミーを開催する機会に携わった次第です。



フライシャー氏が目指した音楽教育とは一言で言うと、


時代背景や奏法、作曲家などに極めて忠実で音楽に対して献身的であり、


幅広い関連知識とレパートリーの充実を


競争の観点が一切ない環境で音楽家を育む事だったという印象です。




今回Shadrin 氏と話していて驚いた事。


それは、フライシャー氏の生徒達は1日の大半


マスタークラスで過ごしていたと事でした。




マスタークラスにそれだけ時間を費やしていたら、


専門的にピアノをやってきた人は誰でも


個々の練習時間がそれだけ短くなるのではと直感的に思いがちですが、


生徒一人一人が学ぶレパートリーの楽譜を全て持ち入り、


自分が曲を学び始める前に、


他の人がその曲を一から学んでいる様子を学べるので


行き当たるであろう問題点や抑えるポイントなど、


とにかく短時間でコンテンツの濃い学びができてしまう。


そして生徒同士皆とても仲が良く、家族のような絆を結んでいたと。



ピアノを学ぶ者はレパートリーが重厚であるが為に練習時間が必然的に長い。


アンサンブル経験が他の楽器奏者に比べて


非常に少ない事などから他の楽器奏者に比べて非常に孤独。


コンクール運営やコンサートビジネスなどの傾向から


アーティスト間での競争的要素がどうしても強くなり


作曲家のアートそのものに対しての敬意が希薄となってしまったり


レパートリーの偏りができてしまう。


そしてそれに伴い影響を受けた聴衆が支える音楽文化そのものが低下する。





このような現代のピアノ教育やクラシック音楽界の課題に対抗するかのように


フライシャー氏はご自身の演奏活動や指導を通じて


誠実に自身のルーツであるシュナーベル、そしてベートーヴェンにまで繋がる


伝統音楽家として受け継いだ保守的な音楽理念を


次世代に伝授する事に力を注いた様子など、興味深く二人に聞く事ができました。




後半につづく

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