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指には本当に筋肉がないの?

「指には筋肉はないです」


のお話しをすると、ピアノ歴が比較的長い大人でも


「えっ?!」


と驚かれることがあります。




正確には指には筋肉がほとんどなく、


指の動作に司る筋肉は指にはありません。




打鍵の強さや、打鍵時に指の形などの様子から


「指が強い」「指が弱い」という言い方を使う人もいますが、


指の筋肉が強くなるから指が強くなるという


勘違いにつながる言い方でもあると思っています。




一昔前、音階やエチュードなどを練習するときに


「指の筋力をつけましょう」


と打鍵の衝撃の強さを促す教え方をする先生方が


多かった事がまだ影響しているかもしれません。




では、指に筋肉がないのなら


私たちはどうやって指(一般的に指と認識する赤丸のついている部分)を


動かしているのでしょうか?


指を動かすしくみは


前腕と手(手のひら)の骨と腱と筋肉の絶妙な


コンビネーションで成り立っています。



たまにまだ幼い生徒さんとも指の関節を


一緒に数えてみることがありますが、


各関節を曲げる時に担当する筋肉が


それぞれ違うことも楽しくお話しします。


その各関節を曲げる事に関与する筋肉の全てが


手のひらと前腕にあります。




「指を鍛える」という認識が


指だけに注意を向けて動かす事であると、


指を動かすことに本当に作用している


腕や手のひらの大部分の動きが


疎かになり、様々な問題に直面しがちです。




例えば、指先の爪に一番近い第一関節(DIP関節)


が打鍵時に著しくフニャと凹んで


指を手前に引く力が強すぎる子がいるとしましょう。




まず、第一関節が打鍵時に凹む事自体が悪いことではなく


それだけに執着して直すことではないと私は考えています。




むしろ第一関節が凹むことだけが気になってそれを直そうと


「丸く正しく見える」角度で第一関節を固定することで


可動域がなくなってしまうと、


キーを繊細にコントロールできなかったり


弱い音や色彩感あふれたタッチなどが感じ切れないことに繋がる


鈍感な手になってしまいます。




指先の形だけを直そうとしたために、


しなやかで繊細で自由に動ける力強い手が


育まれない。


本来問題である指を手前に引きすぎいる力加減を


コントロールしている手や前腕、


身体全体の使い方に目を向けていないがために


改善していないと、苦労してしまいます。





身体の動作は脳の指令なしには勿論できない訳ですが、


どこに意識を向けるかによって


動きや筋肉の付き方が変わってくることは


スポーツ選手やダンサーの世界では当たり前のお話。




ピアノを弾くというかなり高度な動作運動をする私たちも


正しい身体のミニ知識を取り入れて理解する事で


身体の使い方が良くなり、


表現の幅が広がるという結果に繋がることが


とても面白い事ですね。






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